ある程度韓国語を勉強している人なら、母音には「陰と陽がある」という話を一度くらいは聞いたことがあるかもしれません。
母音の「ㅏは明るいイメージ」だとか「ㅜは暗い印象がある」とかいうあれですね。
外国人が韓国語を学ぶ上で陰陽とか難しい言葉を知る必要はないのですが、ある程度知っておくと得することもあります。
そこで韓国語の母音の陰陽などについて話していきます。
ハングルが象徴する3つのもの「天地人」
ハングルは自然界や世の中の原理を文字に表現したものだと言われています。
ハングルが象徴しているのものは三つあり、それが「天と地と人」です。
人が生きていく上で、自然との関わりは避けられないですが、それを「天地人」の3つに表しているわけです。
点(・)は太陽を意味する
天(空)が表すものは「太陽」です。
空に見える太陽が丸いからか、それとも他に何か特別な理由があって点(・)にしたのか。
とりあえずシンプルでわかりやすいと思います。
横線(ㅡ)は大地を表す
「地」を象徴するのが横線(ㅡ)です。
ハングルは発音記号であると同時に象形文字でもあるので、平らな大地のようにそのまま横線を引きます。
つまり地(ㅡ)の上に天(・)があれば、地上に太陽が出ている「昼間」を意味することになります。
縦線(l)は人を象ったもの
縦線(l)の表すものが「人間」です。
これは人が立っている姿を表現していることになります。
人が生きていくために活動している様子とでも言えばいいでしょうか。
何かしら行動しているわけで、寝転がって休んでいるわけではありません。
母音を作る原理は?
天と地と人の3つが合わさる
太陽の下で、大地を踏みしめ、働く人間がいる。
これを「・ㅡㅣ」を使って表します。
天地人(・ㅡㅣ)の組み合わせ
・ + ㅡ = ㅗ(日が出ている)
ㅡ + ・ = ㅜ(日が出てない)
ㅣ + ・ = ㅏ(日が昇る)
・ + ㅣ = ㅓ(日が沈む)
例えば「・とㅣ」を組み合わせたら、ㅓとなります。
こんな感じでハングルは文字を組み合わせていくわけです。
なぜ「ㅏとㅗ」が陽性母音なの?
ㅏとㅗあるいはㅏとㅗを含む母音を陽性母音と呼びます。
ㅏとㅗが陽性と言われる理由は「太陽が出ているから」です。
ㅗはお日様が真上にあるからすぐにわかるとして、ㅏが陽性なのは日が昇る方角(東)を指しているためです。
通常人が空(太陽)を見上げたら、南を向くと思います。
この時、日が昇る方角である「東」は左手になるわけですが、その様子を表しているのがㅏです。
つまり空が明るくなっていくからㅏも陽性になり、逆の「ㅓとㅜ」が陰性母音となるわけです。
ちなみにこの陰陽の考え方は「ひな人形」などにも見られ、ひな壇に向かって右(お内裏様から見て左)が左大臣になります。
※左大臣の方が右大臣よりも格上
ㅏとㅗ以外はすべて陰性母音
太陽が出ている「ㅏ、ㅗ」以外の母音は人を象徴する中性母音(ㅣ)を除いて、すべて陰性とみなします。
基本母音の陰と陽
陽性母音
ㅏ, ㅑ, ㅗ, ㅛ
陰性母音
ㅓ, ㅕ, ㅜ, ㅠ, ㅡ
中性母音
ㅣ
夕方や夜を象徴する「ㅓ、ㅜ」はもちろん、これらを含む「ㅕ、ㅠ」も陰性母音です。
また太陽の出ていない曇りや雨の日は気分がスッキリしないように、地(ㅡ)だけの場合も陰性母音となります。
「天地人」はキーボードにも使われる
携帯電話でハングルを入力する際にも天地人はよく使われます。
スマートフォンのキーボードとして使用されることが多いのが、QWERTY方式と天地人方式です。
QWERTY方式とはパソコンと同じ配列のキーボードを使うものです。
天地人方式では「・ㅡㅣ」を組み合わせて文字入力を行います。
使いやすさは人それぞれですが、スマートフォンで韓国語を入力したい人はキーボードアプリを設定しておくといいでしょう。
androidを使っているに人はハングルが打ち込めるキーボードアプリとして「Googleキーボード」がおすすめです。
母音を組み合わせはどうなっている?
二重母音には「陰と陽」が同時に存在しない
二重母音は短母音を複数組み合わせたものからできています。
ところがこれに陽性母音と陰性母音の組み合わせは見られません。
二重母音は陰陽のどちらかで組む
陽性母音
ㅗ + ㅏ = ㅘ
ㅗ + ㅐ = ㅙ
ㅗ + ㅣ = ㅚ
陰性母音
ㅜ + ㅓ = ㅝ
ㅜ + ㅔ = ㅞ
ㅜ + ㅣ = ㅟ
ㅡ + ㅣ = ㅢ
陽母音と陰母音を組み合わせることはない
ただし夜に行動する人もいるように、中性母音(ㅣ)は陰陽どちらとも組み合わせることが可能です。
擬声語・擬態語も組み合わせの規則は同じ
擬態語や擬声語にも陰陽の組み合わせの法則は適用されます。
擬態語や擬声語の陰陽
陽性母音
깡총깡총(ぴょんぴょん)
아장아장(よちよち)
陰性母音
껑충껑충(びょんびょん)
어정어정(のそのそ)
プラスとマイナスが合わされば0になる(消滅する)ように、陽性母音と陰性母音で単語を組み合わせないのが基本です。
※例外はあります
活用と「-아요/어요」の使い分け
ここまでくれば、活用についてもすぐにわかると思います。
語幹の母音が陽性「ㅏ、ㅜ」かどうかで、요体の使い方が変わります。
活用と「-아요/어요」の組み合わせ
語幹が「ㅏ、ㅗ」なら-아요
가다 + -아요 = 가요
만나다 + -아요 = 만나요
語幹が「ㅏ、ㅗ」以外は-어요
먹다 + -어요 = 먹어요
울다 + -어요 = 울어요
こういった部分にも母音の「陰陽」は深く関わっているわけです。
もし韓国が南半球にあったら、母音の体系が変わってたかもしれないですね。
ただ仮にそうだとしても、西から太陽は昇りません!