旧正月と秋夕

韓国の文化を知る上で避けて通れないのが、旧正月や秋夕といった명절(名節)です。

特に旧正月では家族や親戚が集まり、차례(茶禮)を行います。

ところでこの儀式、日本と似ている部分があったりもします。

そこで韓国の旧正月や祭祀(チェサ)と茶禮(チャレ)の違いなどについて話していきたいと思います。

日本と韓国のお正月に違いは?

日本の正月って?

まず日本のお正月についても簡単に知っておきましょう。

お正月は旧暦の1月に行っていた先祖供養の風習から由来します。

この時期はあの世から帰ってくるご先祖様の魂を出迎えるための儀式が行われていましたが、それが「正月」として現代に受け継がれていきます。

旧暦の7月にも同じようなことは行われていましたが、こちらは仏教の行事と融合しながら「お盆」になります。

韓国の旧正月と名節

명절(名節)とは簡単に言うと伝統的な行事やイベントを行う日のことです。

もともと旧暦で行っていた行事がそのまま現代に受け継がれれているので、正月や秋夕はすべて旧暦で行われるのが特徴です。

また正月や秋夕は「祝日」として扱われるので、この時期の韓国は連休となり、家族みんなで過ごします。

連休で里帰りするのは日本と同じだと言えるでしょう。

日本と韓国で大きくは変わらない

日本のお正月と言えば、こんなイメージでしょうか。

・家族や親せきが集まり、新年の挨拶をする
・お餅を食べる
・子供はお年玉をもらう

韓国の正月でも基本的にやることは日本と大きくは変わりません。

韓国で旧正月にすることは?

新年の挨拶と年賀状のやりとり

新年の挨拶をすることを새해 인사를 하다あるいは새배를 드리다などといいます。

새해 복 많이 받으세요という挨拶は決まり文句ですので、そのまま暗記しましょう。

ところで新年の挨拶としておなじみの年賀状は韓国にもあり、漢字語でそのまま연하장といいます。

韓国の年賀状にも葉書が使われ、書かれている内容がハングルか日本語かの違い程度です。

しかし実際には葉書の年賀状よりもカカオトークの年賀状機能などを使ってメッセージを送る人が大多数。

さすがIT大国です。

子供は「새뱃돈」お年玉をもらう

子供は新年の挨拶をしたら、새뱃돈(お年玉)をもらいます。

金額は一家や親戚の経済事情によっても変わります。

昔は長男のお年玉が他の兄弟よりも多いという家庭も多く、それだけ長男が重要視されていたことがわかります。

僕の父も長男で子供のころは他の兄弟よりもお年玉をたくさんもったそうです。

お正月の食べ物といえばお餅「韓国のスープ餅」

日本人がお雑煮を食べるように、韓国では떡국(スープ餅)を食べます。

日本のお餅と違うのはもち米ではなく、うるち米ベースでできていることでしょうか。

そのためびよーん!と伸びはしません。

ついたお餅を棒状にのばしたものを가래떡といい、これを刻んでスープに入れて食べます。

トック1kg(韓国食品、インスタント食品、もち、餅)
[松鶴]

韓国には떡국을 먹고 나이도 먹는다(スープ餅を食べて歳をとる)という言葉もあり、新しい年になったことを実感できる食べ物です。

ご先祖様に挨拶をして祈りをささげる

ご先祖様に挨拶の儀式を行いますが、これを차례(茶禮)といいます。

茶禮(チャレ)はもともと旧暦の毎月1日と15日(新月と満月の日)、そして旧正月や秋夕といった名節の日に行っていました。

これが時代の流れで旧正月や秋夕といった大きな行事の日にしか行わなくなりました。

今の時代に茶禮や祭祀ばかりやっていたら、大変なことになりますね。

제사(祭祀)と차례(茶禮)の特徴とは?

祭祀と茶禮の意味合い

先祖供養の儀式として行う祭祀(チェサ)と茶禮(チャレ)、両者は全く性質が異なります。

차례를 지내다

今でこそ正月や秋夕の時にしか行わないものの、かつては定期的かつ頻繁に行っていたのが茶禮で、祖先に対する挨拶としての意味合いが強いです。

제사를 지내다

故人が無事に成仏し、あの世で何不自由なく暮らせるように祈ります。故人の命日に行うので、ご先祖様すべてが対象ではありません。日本の法事に相当します

祭祀と茶禮はここが違う

차례(茶禮) 제사(祭祀)
時期 명절(名節) 기일(命日)
時間帯
 お供え物 季節の物がメイン 酒、ご飯
 食べるもの 松餅
スープ餅
特になし

名節では송편(ソンピョン)や떡국(スープ餅)などを食べるのも特徴ですね。

時期や時間帯も異なる

茶禮は名節の日の朝に行い、そのままお墓参りに行くというのが通常の流れです。

一方で祭祀は기일といって、故人の命日に行います。

時間帯も猪の刻の終わりから子の刻にかけて(夜の11時から12時くらい)の夜に行われます。

しかし最近は次の日は仕事だという人も多く、もう少し早い時間から始めてすぐ帰ろうという人も増えています。

日本の法事と韓国の祭祀はここが違う

韓国の祭祀(チェサ)が日本の法事と違うのは毎年行うことです。

また1주기・3주기・7주기・13주기・17주기(1回忌・3回忌・7回忌・13回忌・17回忌)などは、通常よりも大々的にやる傾向が強いです。

ただ最近は、正月や秋夕でみんなが集まった日にまとめて執り行う傾向にあります。

日本でもお盆にまとめて法事というケースは多いので、なんだかんだいって日本と韓国でほとんど変わらないと言えそうです。

食べものやお供え物の準備

現代ではお供え物も「出前」で済ませる?

正月などで親戚が集まるとなると、みんなが食べる料理やお供え物の準備は長男の嫁が一人でやらなきゃいけない。

という家もありますが、最近は出前を利用するケースも増えています。

注文一つでみんなで食べる料理はもちろん、食品サンプルを使った「お供え物セット」などまで配達してくれます。

昔のやり方が残っている地域や家庭もありますが、時代の流れでどんどん変わってきています。

お供え物として並べるものは?

茶禮ではたくさんのお供え物が並びます。

特に秋夕は収穫祭としての意味合いも兼ねているため、その年に取れたものも並んだりします。

一方祭祀はお酒やごはんと基本比較的シンプルですが、故人の好きだった食べ物を置く場合もあり、人それぞれとも言えます。

ただし韓国では「あずき」をお供えしないのが基本です。

韓国では小豆をお供えしてはいけない?

あずきは日本では「邪気を追い災いから身を守る」とされていて、おはぎなどの材料にもなりますね。

しかし韓国では「あずきはすべての霊をはね返す」と考えられています。

そのため守護霊などもみんな追い払ってしまい、ご先祖様が守ってくれなくなるからかえってよくないとして、あずきは使わないのです。

あずきが入ったものを少しくらい食べること(松餅などに入れて食べることはあります)はあっても、お供え物としては並べないんですね。

親戚がみんな集まるというのは都市部ほど減ってきていて、こうした点は日本も似ています。

日本も韓国で表面的な違いはあっても、共通点は多いのではないでしょうか。