韓国語を勉強する時、最初に習うのが「自己紹介」の表現です。
よろしくお願いしますという意味で、「잘 부탁해요」や「잘 부탁합니다」といった言葉が本に出てきます。
ところが実際には、こういった表現を使わないことは多いです。
そこで、今回は「自己紹介の矛盾」についてです。
教科書どおりの自己紹介や模範的な挨拶
私は○○といいます
自己紹介の表現は短いので、そのまま丸暗記している人がほとんどだと思いますが、実は難しい文法が使われていたりします。

안녕하세요.
こんにちは
전 김대호라고 해요.
私はキム・テホといいます

안녕하십니까.
こんにちは
전 박기영이라고 합니다.
私はパク・キヨンといいます
こんな感じの文が教科書に出てくると思いますが、中身は名詞と間接話法を組み合わせた「-라고 하다」です。
はじめまして、よろしくおねがいします
こちらもオーソドックスな自己紹介の表現です。

처음 뵙겠습니다.
はじめまして

만나서 반갑습니다.
お会いできてうれしいです
잘 부탁합니다.
よろしくおねがいします
처음 뵙겠습니다:はじめまして
만나서 반갑습니다:お会いできてうれしいです
잘 부탁합니다:よろしくお願いします
教科書には、このように出てくると思います。
お会いできて光栄です
「お会いできてうれしいです」よりも、さらに尊敬の意を伝えたい時はこれです。

만나서 영광입니다.
お会いできて光栄です

저도 영광스럽습니다.
私もです
有名人や、憧れの人に会って「感激です」と言いたい時に使ってもいい表現です。
「光栄」の漢字をそのままハングルにすれば광영ですが、逆にして使うので気を付けましょう。
ここまでが、教科書通りの模範的な挨拶の表現です。
本の通りに自己紹介する人は少ない
私は○○です、俺は△△だ
実際には、教科書に出てくる表現の一部が用いられていなかったり、簡単な表現を使ったりというケースが多くなります。

안녕하세요. 김지성입니다.
こんにちは、キム・ジソンです

저는 황수지예요.
私はファン・スジです
普通に自己紹介する場合なら、こんな感じになります。
いちいち間接話法を使ったりはせず、シンプルに「私は~です」と表現します。

안녕, 난 〇〇.
よお、俺は〇〇

난 △△.
俺は△△だ
同級生など、お互いに気を使う必要がない間であれば、ため口(パンマル)での会話になるので、非常にフランクです。
「はじめまして」や「よろしく」はどうなる?
「はじめまして」や「よろしく」は、すべて「반갑다」で表現してしまうことが多いです。

반갑습니다.
はじめまして
김선아입니다.
キム・ソナといいます

최지현이에요.
チェ・ジヒョンです
반가워요.
よろしくお願いします
はじめましてが「처음 뵙겠습니다」になっていないし、よろしくも「잘 부탁해요」ではありません。
それだけ「반갑다」のニュアンスが広いことがわかると思います。
日本人同士でも、よほどの相手でもない限り、自己紹介で「お会いできてうれしいデス」と言うことは、ないのではないでしょうか。
教科書通りに表現する時はあるの?
教科書のような「模範的な自己紹介」をした方がいい場合もあります。
それは「はじめまして」です。

처음 뵙겠습니다.
初めてお目にかかります
현주씨 남자친구입니다.
ヒョンジュさんとお付き合いしています
한상우입니다.
ハン・サンウです
付き合っている相手の両親と初めて会うといった時は、教科書通りの挨拶の方がいいでしょう。
最初に好印象を与えられれば、その後もいい関係が保てるのではないかと思います。
よろしくを「잘 부탁해요」とあまり言わないのはなぜ?
「부탁」と「よろしく」のニュアンス
よろしくを「잘 부탁해요」と言わないことが多いのは、「よろしく」の意味が違うからです。
よろしく | 부탁 |
---|---|
①命令 ②お願い ③適切に、うまく |
①命令 ②お願い ? |
「よろしく」や「부탁」には、このようなニュアンスがあります。
命令としての意味
「よろしく」と言いつつも、中身は「やれ」という①命令です。

이거 획인 좀 부탁해.
これ、確認よろしく
「確認よろしく」と言いつつも、確認しなさいという指示を出していることがわかると思います。
「よろしく」や「부탁」を命令として用いてるので、自己紹介ではありません。
お願いの意味
「よろしく」が、②お願いの意味になる場合です。

우리 딸 잘 좀 부탁해요.
娘をよろしくね(娘をお願いね)

앞으로도 잘 부탁드릴게요.
今後もよろしくお願いしますよ
娘をよろしく:娘を「幸せにしてね」というお願い
今後もよろしくお願いします:今後も「どうぞごひいき」にというお願い
「お願い」のニュアンスで話をしていますが、自己紹介もこのパターンになります。
自己紹介の「よろしく」は、お見知りおきを(顔と名前を覚えてください)というお願いです。
だからこそ、基本通りの表現として「잘 부탁해요」が、教科書に出てくることになります。
「命令やお願い」をしているわけじゃない
実際に「よろしく」と言いつつも、教科書通りの表現にならないのは、③適切に・うまくのニュアンスだからです。

난 김철수, 반갑다.
俺はキム・チョルス、よろしく

난 박기영, 반갑다.
ああ、よろしく
ここでは「顔と名前を覚えてくれ」という意味ではなく、「お互いうまくやろう、仲良くしましょう」という話をしているだけです。
命令やお願いをしているわけではないので、「부탁」を使わないわけです。
さいごに
自己紹介だけではないですが、より自然な表現は大事です。
日ごろから辞書頼みの直訳ではなく、「その場に合った表現は何か」を意識するよう心がけましょう。