韓国語を勉強している人が、難しさを感じるのが「使役」です。
日本語で「~させる」と表現することの多い使役は、韓国語になると「~させる」と訳せないものがたくさんあるからです。
今回は使役の表現の種類やニュアンス、使い方などについて解説していきます。
使役の文章の基本
韓国語の「使役」って?
使役とは、自分が直接何かをするのではなく、人やものを介して、間接的に何かをすることです。
어머니가 밥을 먹어요.
お母さんがごはんを食べる
(能動文)
어머니가 아이에게 밥을 먹여요.
お母さんが子供にご飯を食べさせる
(使役の文)
能動文(通常の文)では「母親がごはんを食べる」というように、主語と行動する(食べる)人が同じです。
ところが使役の文になると、主語と実行動が一致しなくなります。
主語(お母さん)に対して、ごはんを食べる(事実上の動作)のは子供です。
母親は箸やスプーンといった道具を使って、子供がごはんを食べるのを補助しているだけです。
使役の文はいくつもあるの?
韓国語の使役の文は、3種類に分かれます。
使役の動詞を使った表現
-게 하다を使った表現
気をつけておかなければいけないのは、韓国語の使役(ここではそう定義します)には、日本語の「~させる」で表現できないものが多いという点です。
시키다を使った使役
名詞+시키다で「~させる」
○○하다を○○시키다に変えることで、「~させる」と表現します。

映画は人々を感動させます

睡眠は人間の記憶力を向上させます
~시키다は「○○させる」と訳せることが多いので、覚えやすいと思います。
また「-를 시키다」のように、名詞と시키다を切り離して表現することも可能です。
ただし시키다には、受け身に近いニュアンスの文もあります。

社長はいつも私に仕事をふるんです
(いつも仕事をさせられる)

お母さんがいつも私にばかり掃除させるの
(お母さんにいつも掃除ばかりさせられる)
とらえ方によって受け身にもなる文ですね。
注文する・出前を頼む場合は「何かを持って来させる」
시키다にはちょっと変わった使い方があり、「注文する、出前を頼む」という意味もあります。

私たち何注文したんだっけ?

ジャージャー麺も一緒に頼もうよ
피자 시켜 먹자なら「ピザの出前を取って食べよう」ということですね。
注文や出前をすることで「何かを持って来させる」と考えれば、理解しやすいのではないかと思います。
注文や出前をする人(主語)と、実際にチキンやピザを持ってくる人は別です。
友達を「紹介する」は使い方が特別
「誰か紹介してよ」のような表現には、소개해 줘요でもいいんですが、소개시키다もよく使われます。

私にカッコイイ男性紹介してよ
「友人が『知人の男性』を自分に紹介する」という話なのに、直訳するとおかしくなります。
これはそのまま丸暗記しましょう。
시키다が使えない動詞
머리하다、밥하다のような動詞は、시키다を使うことができないので注意しましょう。
머리하다:手入れ、カット、カラーリングなど、髪の毛に手を加えること
밥하다:ご飯の支度をすること
したがって밥을 시키다と言えば、「ご飯を注文する」という別の意味になります。
使役の動詞を使った表現
能動の動詞を使役の動詞に変える「着る→着せる」など
使役の動詞には2種類あります。
1つは「食べる」を「食べさせる」とするように、通常の動詞を使役の動詞に変えたものです。
먹다 + 이 = 먹이다
食べる → 食べさせる
입다 + 히 = 입히다
着る → 着せる
녹다 + 이 = 녹이다
溶ける → 溶かす
それぞれの単語の中に「이や히」が加わっている。
使役の動詞を作る方法は、受け身の場合と似ていて、接詞と呼ばれる「이、히、리、기、우、구、추」のどれかが動詞の中に入ります。
またどの接詞が入るのか、法則性や規則性はありません。
「~させる」と訳せないもの
韓国語の使役は、日本語で「~させる」と表現できないものも多いです。
익히다

豚肉はよく火を通して召し上がってください
익다は「火が通る」という意味ですが、そのまま「火を通させる」にしたら、しっくりこないでしょう。
加熱させる→火を通させる→火を通す
したがって、こんな感じで考えてみましょう。
녹이다

寒かったでしょうに、早く手を温めて
녹다(溶ける)を使役にしたのが녹이다(溶かす)ですが、凍えた手を温めたりする時にも使います。
凍った「手」を溶かす→温める
漫画のように、氷づけになった手を火にかざして、溶かしていくようなイメージをしてみましょう。
올리다

写真はさっきSNSにあげました
올리다(上げる)は、SNSに「アップさせる」とすれば、理解しやすくなるのではないでしょうか。
使役になる動詞の例
動詞 | 使役系 | 使役の意味 |
---|---|---|
보다 | 보이다 | 見せる |
녹다 | 녹이다 | 溶かす |
먹다 | 먹이다 | 食べさせる |
죽다 | 죽이다 | 殺す |
입다 | 입히다 | 着せる |
돌다 | 돌리다 | 回す |
살다 | 살리다 | 生かす |
벗다 | 벗기다 | 脱がす |
타다 | 태우다 | 乗せる |
숨다 | 숨기다 | 隠す |
비다 | 비우다 | 空ける |
날다 | 날리다 | 飛ばす |
알다 | 알리다 | 知らせる |
맡다 | 맡기다 | 預ける、任せる |
웃다 | 웃기다 | 笑わせる |
주다・받다・잃다・돕다などは、使役に変化しない動詞です。
形容詞を使役に変化させる「広い→広げる」など
使役の動詞には、形容詞を動詞に変えたものもあります。

音量を少し下げてよ
낮다(低い)に「추」が加わり、낮추다(低くする)になります。

寒いから温度を少し上げてちょうだい
높다(高い)に「이」が加わり、높이다(高くする)です。
機械を使って「音量や温度を変化させる」と考えれば、ニュアンスがつかめるのではないかと思います。
いずれも主語と実際に変化するものが同じではないことがわかると思います。
使役になる形容詞の例
形容詞 | 使役 | 使役の意味 |
---|---|---|
넓다 | 넓히다 | 広げる |
밝다 | 밝히다 | 明るくする |
식다 | 식히다 | 冷やす |
높다 | 높이다 | 上げる |
낮다 | 낮추다 | 下げる |
맞다 | 맞추다 | 合わせる |
좁다 | 좁히다 | 狭める |
※ここに書かれているものは一例です
-게 하다の使役
間接的に何かをさせるというニュアンス
使役の3つ目は、-게 하다を使った文章です。

お母さんが子供にご飯を食べさせる
먹게 하다は、子供に「早くごはん食べなさい!」と命令するようなニュアンスです。

友達に歌ってもらいました
歌を歌わせるのも「友達にそうするように促した」という意味になります。
つまり-게 하다は間接的な行動を意味します。
ある状況を作り出す、ある状況にする
-게 하다は単に「~させる」という意味よりも、何らかの状態・状況にもっていくと考えましょう。

部屋を明るくします
部屋を「明るい状態」に持っていくということですね。

同じこと何度も言わせるな
自分が同じことを言うようような状況に、相手がしているという意味です。

気のあるふりはしないでよ
相手が勘違いや思い違いをするような状態に持っていく、期待するよう仕向けるというニュアンスです。
気のあるふりやそぶりを見せれば、相手が勘違いすることはあるかもしれません。
「-게 만들다」に文を作り変えよう
-게 만들다にも、-게 하다と同じようなニュアンスがあります

すぐに寝れるアイマスクがあります
この場合は「すぐに寝る状態を作り出してくれる」というニュアンスです。
使役は-게 만들다の一緒に練習していくといいとでしょう。
まとめ
1.-시키다で「~させる」
2.使役の動詞を作る
動詞や形容詞に「이,히,리,기,우,구,추」を加える
3.-게 하다
間接的に動作を促す
使役は覚えるべきことがたくさんあるので、少しづつ勉強しましょう。