韓国語の語彙の大半は漢字を使った言葉、すなわち漢字語だと言われています。

ただすべてハングルで表示するため、漢字語に対して何となく覚えにくさを感じている人は多いかと思います。

そんな人は日韓の漢字の違いなどを知っておくと覚えやすくなります。

まずは漢字について知っておこう

漢字の基本は繁体字

漢字は中国で誕生した文字ですが、それが現代に通用するものとして体系化されたものを繁体字(はんたいじ)と言います。
※大まかに考えてください

本来の姿に最も近い字体とも言えます。

戦前はどこも繁体字が使われていましたが、現代では繁体字を使う地域とそうでないところに分かれていきます。

現在も繁体字を使っている国や地域には台湾、香港、韓国があります。

中国で簡略化した簡体字

かつて中国大陸で蒋介石(国民党)と毛沢東(共産党)が権力争いをしていたことは、歴史の授業で習ったと思います。

そして敗れた蒋介石たちの逃げた場所が「台湾」ですね。

そこから台湾(中華民国)中国(中華人民共和国)はそれぞれ独自の文化を形成していくわけですが、漢字の使い方にも差が出てきます。

台湾では昔からの繁体字を使い続けているのに対し、中国では簡易化した簡体字(かんたいじ)を使うようになっていきます。

簡体字
(中国)
繁体字
(台湾)
驿
首尓
(ソウル)
首爾
(ソウル)

簡体字を使う国には中国、シンガポール、マレーシアなどがあります。

日本の漢字の特徴は?

日本は戦前、繁体字に準じた漢字である「旧字体」を使っていました。

ところが旧字体は戦後、新しく制定された漢字に切り替わっていきます。

日本が独自に簡略化した、いわゆる「新字体」ですね。

新字体 旧字体

新字体を使うようになったからと言って旧字体がなくなったわけではなく、人名など一部では旧字体が使われるケースがあります。

繁体字(旧字体)はどんな時に使う?

繁体字(旧字体)が使われる身近な例をあげるとすれば「占い」です。

名前の画数で運勢を判断する「姓名判断」に新字体を使わない占い師もいます。

これは簡易化していない「本来の漢字」でこそ、正しい鑑定結果が出るという理由からです。

占い師に鑑定してもらいたい人はあらかじめ自分の名前を旧字体でどう書くのか調べておいてもいいでしょう。

韓国の漢字の特徴と読み方

韓国の漢字は「繁体字」が基本

韓国には世宗大王が作った「ハングル」がありましたが、国民に普及していたわけではなく、一部の人が漢字を使っているだけでした。

日帝時代に入ると一般国民にも漢字とハングルが広まっていきますが、普及した漢字は繁字体ベースです。

また日本から入ってきた漢字もあり、韓国の漢字は「台湾の繁体字や日本の旧字体を使っている」と考えればイメージしやすいと思います。
※朝鮮半島独自の漢字もあります

漢字一文字に対してハングル一文字で読む

韓国の漢字は「一文字で読む」のが特徴で、漢字一文字に対して、ハングル一文字を当てていきます。

=한、=자
=대、=한、=민、=국

人名も漢字とハングルは「1:1」で読みます。

金妍兒=김연아
裵秀智=배수지
李寶美=이보미
李珉廷=이민정
崔多彬=최다빈

ただし「김하늘」のように、純粋なハングル(漢字を使わない)の名前の人もいます。

漢字の読み方は一つが原則

韓国の漢字は「読み方が一つ」というのも原則です。



務員무원

日本語の音読みと訓読みのように、複数の読み方があるわけではありません。

=병
=학
韓医=한의

語彙が変わっても読み方は変わらないので、ハングルでは同じように書きます。

つまり漢字の読み方を一つ覚えれば、同じ文字を使った言葉は一気に覚えやすくなるわけです。

漢字の読み方の例外(読み方が複数ある漢字)

漢字の読み方にも例外はあり、複数の読み方をする漢字がないわけではありません。

読み方1 読み方2
[緑] 방[房]
마[魔] 한[寒]
[容] [貿]
황[況] [令]
분[分] [沙]
요일[曜日]
강산[剛山]
수현[秀賢]
자동[自動] 자전[自転]
가능하다[可能だ] 적절하다[適切だ]

こういった漢字はそのまま覚えるしかありません。

頭音法則にも注意しよう

漢字語には두음법칙(頭音法則)と呼ばれるものがあります。

漢字語の発音が変わる頭音法則

론() – 물(物)
동(働) – 근(勤)
말(末) – 신(新)

ㄹやㄴは単語の先頭に来ると発音が変わってしまいます。

こういうケースも含めると読み方は複雑になるかもしれません。

漢字語の読みを覚えるポイントは?

漢字の「一部分の読み」に注目する

漢字の一部分の読みに着目してみましょう。

例えば「員、靑、區、彔」など、同じ部位を含む漢字は読み方が同じだったりします。

員(원):員、圓、傊
靑(청):靑、凊、請、晴、鯖
區(구):區、驅
彔(녹):錄、綠、祿、碌
求(구):求、球、救

部分的な読みがわかっていれば、신하다(申する)といった漢字語もすぐ覚えられるわけです。

また読み方を知っておくことで、맞춤법(スペル)のミスを防ぐのにも役立ちます。

ちなみに韓国語の漢字の読み方を調べる時は「Naver漢字辞典」が便利です。

旧字体と新字体の違いを知る

旧字体と新字体の違いを知っておくのも、漢字語の読み方を覚えるのに役立ちます。

新字体 旧字体
円[원] 圓[원]
青[청] 靑[청]
緑[녹] 綠[녹]

漢字語を辞書で調べると、どんな字を使っているのかがわかります。

この時繁字体(旧字体)がわかれば、日本の漢字に置き換えて考えることもできます。

日本語の読み方が同じものをまとめて覚える

日本語で同じ読み方をする漢字をまとめて覚えてしまうものもありです。

せん:船、線、先、鮮(韓国語の読みは
せん:専、戦、前、銭(韓国語の読みは
でん:電、田、伝、転、全(韓国語の読みは
たん:短、単、端(韓国語の読みは
だん:団、段、断(韓国語の読みは

日本語の漢字の読みと発音が似ているものは特に覚えやすいのではないでしょうか。

カタカナ(英語)で表現している言葉の日本語を知る

カタカナで表現している言葉、いわゆる外来語などを漢字でどう表すのかを知っていると便利です。

例えばピッチャーを「投手」というようなケースです。

한글 漢字 カタカナ
축구 蹴球
(しゅうきゅう)
サッカー
배구 排球
(はいきゅう)
バレーボール
농구 籠球
(ろうきゅう)
バスケットボール
당구장 撞球場
(どうきゅうじょう)
ビリヤード場
권투 拳闘
(けんとう)
ボクシング
포수 捕手
(ほしゅ)
キャッチャー
일루 一塁
(いちるい)
ファースト
본루타 本塁打
(ほんるいだ)
ホームラン
배낭 背嚢
(はいのう)
リュック
천막 天幕
(てんまく)
テント

スポーツの名前は日本語よりも漢字語を使うものが多いです。

これらは漢字がわかればすぐに覚えられる語彙です。

漢字を混ぜた文章をイメージする

読み書きの際に「漢字の入った文章」をイメージすると、漢字語を忘れにくくなります。

普通の文章

도서관공부한다.
図書館で勉強する

어러가지 문제가 있다.
いろいろ問題がある

これを漢字の混ざった文にするとこうなります。

漢字入りの文章

圖書館에서 工夫한다.
図書館で勉強する

어러가지 問題가 있다.
いろいろ問題がある

ひらがなをハングルにして文章を書くような感じですね。

実際に漢字を書く必要はないので、頭の中で漢字をイメージしてみましょう。

漢字を知っている日本人は漢字語を覚えるのには有利ですが、日本語と漢字の使い方や意味が異なるものには注意が必要です。

ちなみに「勉強」の漢字の読みは면강ですが、実際に勉強は工夫(공부)と書きます。

文字通り勉強には工夫が大事なわけです!