目上の人との会話で、よく使われる尊敬語。
「相手を持ち上げる」イメージが強いですが、尊敬語は主語を上げる表現のことをいいます。
韓国語の尊敬語には、-시を使って対象となる人の「動作や状態」を持ち上げる方法と、尊敬語の語彙を使う方法の2つがあります。
「-시」を使った尊敬語
動詞に「-시」をつける
動詞に「-시」を付けて、持ち上げるべき人の「動作」を尊敬語にします。
相手を持ち上げる場合

어디 가십니까?
どこかお出かけですか?

잠시 나갔다올게.
少しの間、出かけてくる
가다に「-시」をつけて「가시다」とすることで、話相手を持ち上げています。
第三者を持ち上げる場合

선생님이 안 보이시네. 오늘은 안 나오시나?
先生がいないけど、今日は来ないのかな?

오늘은 늦게 오신대요.
今日は遅れて来るって
오다に「-시」をつけて「오시다」とすることで、先生を持ち上げています。
「보이시다」や「나오시다」も同様ですね。
しかし、先生が話し相手ではないように、持ち上げる対象と話し相手が一致していません。
形容詞に「-시」をつける
語幹に「-시」をつけて、その人の「状態」を尊敬語にします。

요즘 많이 바쁘신가 봐요.
最近お忙しいようですね

집을 세웠는데 이사를 하느라 정신이 없어요.
家を建てたんだけど、引っ越しでバタバタだよ
바쁘다を「바쁘시다」にすることで、相手の「忙しい」という状態を持ち上げています。

몸은 이제 괜찮으세요?
お体はもう大丈夫ですか?

네, 이제 괜찮습니다.
ええ、もう大丈夫です
こちらも「大丈夫」という状態を、尊敬表現(괜찮으시다)にしています。
動詞や形容詞を尊敬語にする場合は、それぞれの語幹に「-시」を付けます。
「-세요」と「-십니다」の違い
세요は「-시」を使った尊敬語を、-요体で表現したものです。

어디서 사세요?
どちらにお住まいですか?

이거를 한 번 읽어 보세요.
これを一度お読みください
시+어요で「셔요」だったのが、発音が変化して「세요」で定着しました。

어디서 사십니까?
どちらにお住まいですか?

이거를 한 번 읽어 보십시오.
これを一度お読みください
一方で、-ㅂ니다体を語尾に使えば、このようになります。
尊敬語の語彙と種類
님(様)をつけるのは定番
対象となる人を持ち上げるために使われる「特別な言葉」が、尊敬の語彙(名詞、動詞、形容詞、助詞)です。
代表的なものは、役職や地位などの後ろに付ける「님」で、その人の立場を尊重します。
손님:お客様
선생님:先生
과장님:課長
사장님:社長
대통령님:大統領
「お客」を意味する손に、-님が付いたのが「손님」です。
님をつけるだけなので、尊敬の語彙の中では一番簡単かもしれません。
大統領と-님
今でこそ「태동령님」が使われますが、昔は大統領のことを「각하」と呼んでいました。

각하께서 기다리고 계십니다.
(大統領)閣下がお待ちです
「大統領閣下」だったのです。
今では映画やドラマ以外では、なかなか見ない言葉になりました。
個人的には「閣下」の方がカッコいい感じがします。
尊敬の助詞を使った表現「께서、께」
께서や께といった「尊敬の助詞」を使う方法もあります。
께:~に
께서:~が
께서는:~は
尊敬の助詞は、님と一緒になることが多いです。

사장님께서는 11시에 오실 겁니다.
社長は11時に来られます

이걸 김과장님께 전해주시겠습니까?
これをキム課長に渡していただけますか?
「~に」や「~が」といった助詞を尊敬格にして使うだけなのですが、尊敬語の語彙の中では、一番使う機会が少ないかもしれません。
尊敬の名詞は通常の名詞と入れ替えるだけでOK!
名詞にも尊敬語として別の言葉があれば、それを用います。

어서 오세요.
いらっしゃいませ

성함이 어떻게 되세요?
お名前をうかがってもよろしいですか?

최지현이에요.
チェ・ジヒョンです

최지현 손님 이 쪽으로 오세요.
チェ・ジヒョン様、こちらにどうぞ
이름を尊敬語の성함に言い換える以外、特に変わることはありません。
ちなみに「山田様」のように呼び方をしたい場合は、〇〇손님/〇〇고객님と言えばOKです。
尊敬の名詞の例
通常の単語 | 尊敬語 |
---|---|
이름 | 성함 |
나이 | 연세 |
식사 | 진지 |
집 | 댁 |
이 | 치아 |
말 | 말씀 |
그 사람 | 그 분 |
아들 | 아드님 |
딸 | 따님 |
「持ち上げる人=話し相手」とは限らないので、尊敬の代名詞(그 분)もあります。
尊敬の動詞や形容詞が一番ややこしい?
動詞や形容詞にも、尊敬の語彙はあります。

식후 30분마다 약 챙겨 드시고요.
食後30分以内にお薬を飲んでくださいね

안녕히 주무세요.
おやすみなさい
動詞や形容詞に「-시」をつけて持ち上げる代わりに、드시다や주무시다のような尊敬の語彙が入ります。
尊敬の用言の例
通常の単語 | 尊敬語 |
---|---|
먹다 | 드시다 잡수시다 |
죽다 | 돌아가시다 |
자다 | 주무시다 |
아프다 | 편찮으시다 아프시다 |
있다 (人、もの) |
계시다 (人のみ) |
있다には「いる」と「ある」の2つの意味がありますが、계시다は「いる」の場合にしか使えません。
아프시다と편찮으시다の違い
아프다の尊敬語は편찮으시다ですが、「-시」をつけて아프시다にする場合もあります。
では、これらはどのように使い分ければいいでしょうか。

할머니가 편찮으시다고요?
おばあちゃんの具合が悪いって?
「おばあちゃんの具合がよくない」という文ですが、おばあちゃんが主語なので、편찮으시다で「おばあちゃん自身」を持ち上げます。

할머니, 어디가 아프세요?
おばあちゃん、どこが痛いですか?
「頭がいたい、足が痛い」のように、体の一部が主語になっている場合は、おばあちゃんを間接的に持ち上げるので、아프시다となります。
아프다の尊敬語には、このような使い方があることも覚えておきましょう。
1つの文に尊敬語がいくつも含まれる時
持ち上げる人が複数の時
持ち上げるべき対象になる人物が、一人とは限りません。

할머니가 입원하셔가지고 할아버지가 매일 병원에 가세요.
祖母が入院して、祖父は毎日病院に行っています
尊敬の対象となる人が複数出た時は、すべての人を持ち上げる必要があります。
そのため、祖父と祖母の動作(入院する、病院に行く)、両方に「-시」がついています。
一人で複数の動作など
一人がいくつもの動作を行うなど、主語一つに対して、動詞や形容詞が複数の場合です。
1.아버지는 요리를 좋아해서 주말에는 직접 요리를 하세요.
父は料理が好きで、週末は自分で料理をします(基本)
2.아버지는 요리를 좋아하셔서 주말에는 직접 요리를 하세요.
父は料理が好きで、週末は自分で料理をします(〇)
3.아버지는 요리를 좋아하셔서 주말에는 직접 요리를 해요.
父は料理が好きで、週末は自分で料理をします(×)
3番の文だけ「×」になっていますが、これは「主語が同じなら、最後に来る用言を持ち上げる」という原則があるからです。
途中の動詞や形容詞もすべて父のことを言っているので、敬語にしてもしなくても構わないですが、最後だけは敬語にしないといけません。
尊敬語の使い方で迷ったら
どれを敬語にして、どれをそのままで使えばいいのか、迷った時はどうすればいいでしょうか。
・文中の動詞や形容詞はみんな尊敬語に変える
持ち上げるべき人(主語)が何人いようと、みんな敬語にしてしまいましょう。
これでとりあえず、失礼はなくなります。
まとめ
1.尊敬語の使い方
動詞、形容詞に시をつける
尊敬語の語彙を使う
2.尊敬の語彙の例
名詞(님、성함、연세など)
助詞(께、께서など)
動詞(드시다、주무시다など)
形容詞(편찮으시다など)
尊敬語は考え方が日本語と似ているので、要点をしっかり押さえれば、日本人が一番効率よく習得できる部分です。
少し難しいところもあるかもしれませんが、少しづつ覚えていきましょう。